2013年09月05日
第1回 英子の場合vol.1
日常よく見られるクセや習慣、趣味は、実は、脳の働きにとって重要な意味をもっています。脳が求めてしているクセもあれば、そのクセがあることで何だか毎日がうまくいかなくなっているということもあります。
このコラム「クセ活用術」では、3人の人物に登場していただきます。

彼らの日常を見ていきながら、それぞれのクセや習慣をしているときの、脳の中をのぞいてみましょう。
すると、もっとイキイキと、自分らしく生きていくためには、実は、毎日の何気ない行動にチャンスがあるとことが分かってくるはずです。
登場人物3人のゆくえを見守りながら、皆さん自身の生活を充実させていきましょう。
◆英子の場合 vol.1
英子、29歳、会社員。肩書はあるセクションの長。
仕事はデスクワーク中心で、1日中PCに向かい、文章を書いたり、記事のレイアウトをしている。
企画の採択やチェックなど全体を見渡して調整していく役割。
今の仕事はパッとひらめいたアイデアが形になっていくのが面白いし、重要なポジションにやりがいも感じている。ただ、一方で、自分の考えを実現するために会社の中でどう振る舞えば良いのかというのは迷うことが多い。自分自身でどっしり腰を据えて面白いものを書いてみたいとも思っている。それが何なのかはハッキリ分からず、毎日忙しく生活している。

【英子のとある朝の様子】
朝は大抵目覚ましが鳴る前に起きる。
カーテンを開けて、ラジオをつける。テレビは見ない。
ベランダに出て、いつもなんとなく富士山の位置を確認する。
ベランダガーデニングで育てている植物に水をやりながら、葉っぱについている虫がいないかを細かく探す。「週末留守にするときに水があげられないけど、枯れないかなぁ・・・」と考えながら。鉢植えを見ながら「もう少し大きい鉢に移してあげればいいのになぁ・・・」と思いつつ、今日もなんとなくそのままにしている。
食事は、冷凍しておいたパンを焼いてかじる。
週末に趣味の登山に行くため、サイトを見ながらどのルートにしようかを考える。

お茶を飲んで、ごみを出してから歩いて出社。
通勤中にいつも通学の中学生たちを見る。ふと「みんな同じ制服を着て同じ場所に行くのか・・・。なんかそういうのイヤだなぁ・・・」と考える。

脳が何かの問題を解決しようとするとき、2種類の働き方があります。
① 「同時処理(どうじしょり)」と②「経次処理(けいじしょり)」です。
例えば、旅行の計画を立てるシーンを思い浮かべてください。
海に行くとして、あなたはどちらのタイプですか?
①行先の情景を思い浮かべて盛り上がる

②行先までの行き方を調べてルートを考える

①の方は「同時処理」タイプです。脳の別々の場所が同時に働いて、パッとひらめきます。人が考えつかないアイデアをひらめくのが得意で、いつも完成した状態が頭に浮かび、それに向かって作業を進めるトップダウン思考の持ち主。細かい決め事が嫌いで、「だいたいこんな感じで」とイメージが共有できればスムーズにことを進めることができます。ただし、話が飛ぶことが多く、脈絡がないこともしばしば。順番通り用事を済ますのが苦手で「ついでにこれもやっちゃえば」と脇道にそれやすい。
②の方は「経次処理」タイプです。脳のしかるべき場所が順番に働いて、「分かった!」となります。物事の法則性を見抜くのが得意で、いつも目的を達成するための作業手順を頭に浮かべるボトムアップ思考の持ち主。自分が決めた手順が乱されることが嫌いで、順番通りことが進んだこと自体に満足します。ただし、予定外の事態に対応することが苦手で、決定していたはずのことが変わったりするとイラッと。どういう順番で予定を組んだかを人に説明することが多く、目的を見失いやすい。
みなさんは、どちらのタイプでしたか?
脳のタイプによって、処理方法が異なるわけですが、この2つのタイプは、どちらかに偏っているという意味であって、どちらも私たちの脳の中には存在しています。両方の処理方法を使い分けながら、毎日しなやかに生活をしているわけです。この2つのタイプがバランスよく使えれば、どんな問題もササッと解決できそうですよね。「このバランスよく使う」ということを無意識に行っているのが、「クセ」です。
さて、英子さんの脳はというと、パっとひらめく同時処理タイプ。同じ制服を着て同じ学校に通う中学生を見ると、「もっと自由に個性を大事にすべき」と思ったりします。しかし、そんな英子さんは社会人になってちょっと変わってきたみたい。会社組織の中で、目的を果たすためには、誰に、どの順番で話を通すか、という順番通りの行動が大事だということも、感じてきました(本人は気づいていませんが)。同時処理タイプの英子さんにとって、会社の中で重要なポジションをこなすには、ちょっと酷な部分も。「バーッとやっちゃえばいいじゃん!」という気持ちを抑えつつ、周りの社員のペースも重要視しなければいけません。
そんな英子さんに対して、英子さんの脳は、英子さんに経次処理の課題を少しずつ与えて、順番通り処理する脳を鍛え始めました。まずはラジオ。テレビのように完成イメージが視覚的に飛び込んでくるものではなく、順番通り話が展開していきます。そして、葉っぱについた虫探し。全体像ではなく、細部を順番に見ていく脳を鍛えます。
経次処理脳を鍛えつつも、そちらに偏りすぎないように調整しているのが、富士山の位置を確認する行為。自分がどの位置を軸に立っているのかという全体像をつかむ脳もバランスよく使っておきます。
そして、登山です。社会人になってから「山ガール」デビューをした英子さん。登山の中の、工程表をつくって十分な準備をして、順番通り目標を達成していくという要素で、経次処理脳を鍛えています。さらに、登山にはイレギュラーな出来事もつきもの。立てた予定通りいかない場合の臨機応変は、英子さんのお手の物。継次処理脳を鍛えながら、得意な同時処理脳を活かす、まさに英子さんの脳をバランスよく使う格好のアクティビティが登山だということです。
英子さんの朝は、得意なひらめき能力を、会社組織の中で開花させるための絶妙な習慣(クセ)で構成されていました。
毎日の何気ないクセ。脳の仕組みが分かると、それ自体を大事に行うことができますね。そうすれば、もっと毎日がうまく回りだします!
このコラム「クセ活用術」では、3人の人物に登場していただきます。

彼らの日常を見ていきながら、それぞれのクセや習慣をしているときの、脳の中をのぞいてみましょう。
すると、もっとイキイキと、自分らしく生きていくためには、実は、毎日の何気ない行動にチャンスがあるとことが分かってくるはずです。
登場人物3人のゆくえを見守りながら、皆さん自身の生活を充実させていきましょう。
◆英子の場合 vol.1
英子、29歳、会社員。肩書はあるセクションの長。
仕事はデスクワーク中心で、1日中PCに向かい、文章を書いたり、記事のレイアウトをしている。
企画の採択やチェックなど全体を見渡して調整していく役割。
今の仕事はパッとひらめいたアイデアが形になっていくのが面白いし、重要なポジションにやりがいも感じている。ただ、一方で、自分の考えを実現するために会社の中でどう振る舞えば良いのかというのは迷うことが多い。自分自身でどっしり腰を据えて面白いものを書いてみたいとも思っている。それが何なのかはハッキリ分からず、毎日忙しく生活している。

【英子のとある朝の様子】
朝は大抵目覚ましが鳴る前に起きる。
カーテンを開けて、ラジオをつける。テレビは見ない。
ベランダに出て、いつもなんとなく富士山の位置を確認する。
ベランダガーデニングで育てている植物に水をやりながら、葉っぱについている虫がいないかを細かく探す。「週末留守にするときに水があげられないけど、枯れないかなぁ・・・」と考えながら。鉢植えを見ながら「もう少し大きい鉢に移してあげればいいのになぁ・・・」と思いつつ、今日もなんとなくそのままにしている。
食事は、冷凍しておいたパンを焼いてかじる。
週末に趣味の登山に行くため、サイトを見ながらどのルートにしようかを考える。

お茶を飲んで、ごみを出してから歩いて出社。
通勤中にいつも通学の中学生たちを見る。ふと「みんな同じ制服を着て同じ場所に行くのか・・・。なんかそういうのイヤだなぁ・・・」と考える。

脳が何かの問題を解決しようとするとき、2種類の働き方があります。
① 「同時処理(どうじしょり)」と②「経次処理(けいじしょり)」です。
例えば、旅行の計画を立てるシーンを思い浮かべてください。
海に行くとして、あなたはどちらのタイプですか?
①行先の情景を思い浮かべて盛り上がる

②行先までの行き方を調べてルートを考える

①の方は「同時処理」タイプです。脳の別々の場所が同時に働いて、パッとひらめきます。人が考えつかないアイデアをひらめくのが得意で、いつも完成した状態が頭に浮かび、それに向かって作業を進めるトップダウン思考の持ち主。細かい決め事が嫌いで、「だいたいこんな感じで」とイメージが共有できればスムーズにことを進めることができます。ただし、話が飛ぶことが多く、脈絡がないこともしばしば。順番通り用事を済ますのが苦手で「ついでにこれもやっちゃえば」と脇道にそれやすい。
②の方は「経次処理」タイプです。脳のしかるべき場所が順番に働いて、「分かった!」となります。物事の法則性を見抜くのが得意で、いつも目的を達成するための作業手順を頭に浮かべるボトムアップ思考の持ち主。自分が決めた手順が乱されることが嫌いで、順番通りことが進んだこと自体に満足します。ただし、予定外の事態に対応することが苦手で、決定していたはずのことが変わったりするとイラッと。どういう順番で予定を組んだかを人に説明することが多く、目的を見失いやすい。
みなさんは、どちらのタイプでしたか?
脳のタイプによって、処理方法が異なるわけですが、この2つのタイプは、どちらかに偏っているという意味であって、どちらも私たちの脳の中には存在しています。両方の処理方法を使い分けながら、毎日しなやかに生活をしているわけです。この2つのタイプがバランスよく使えれば、どんな問題もササッと解決できそうですよね。「このバランスよく使う」ということを無意識に行っているのが、「クセ」です。
さて、英子さんの脳はというと、パっとひらめく同時処理タイプ。同じ制服を着て同じ学校に通う中学生を見ると、「もっと自由に個性を大事にすべき」と思ったりします。しかし、そんな英子さんは社会人になってちょっと変わってきたみたい。会社組織の中で、目的を果たすためには、誰に、どの順番で話を通すか、という順番通りの行動が大事だということも、感じてきました(本人は気づいていませんが)。同時処理タイプの英子さんにとって、会社の中で重要なポジションをこなすには、ちょっと酷な部分も。「バーッとやっちゃえばいいじゃん!」という気持ちを抑えつつ、周りの社員のペースも重要視しなければいけません。
そんな英子さんに対して、英子さんの脳は、英子さんに経次処理の課題を少しずつ与えて、順番通り処理する脳を鍛え始めました。まずはラジオ。テレビのように完成イメージが視覚的に飛び込んでくるものではなく、順番通り話が展開していきます。そして、葉っぱについた虫探し。全体像ではなく、細部を順番に見ていく脳を鍛えます。
経次処理脳を鍛えつつも、そちらに偏りすぎないように調整しているのが、富士山の位置を確認する行為。自分がどの位置を軸に立っているのかという全体像をつかむ脳もバランスよく使っておきます。
そして、登山です。社会人になってから「山ガール」デビューをした英子さん。登山の中の、工程表をつくって十分な準備をして、順番通り目標を達成していくという要素で、経次処理脳を鍛えています。さらに、登山にはイレギュラーな出来事もつきもの。立てた予定通りいかない場合の臨機応変は、英子さんのお手の物。継次処理脳を鍛えながら、得意な同時処理脳を活かす、まさに英子さんの脳をバランスよく使う格好のアクティビティが登山だということです。
英子さんの朝は、得意なひらめき能力を、会社組織の中で開花させるための絶妙な習慣(クセ)で構成されていました。
毎日の何気ないクセ。脳の仕組みが分かると、それ自体を大事に行うことができますね。そうすれば、もっと毎日がうまく回りだします!
Posted by 日刊いーしず at 12:00