2013年11月21日
第6回 一雄の場合vol.2
一雄の場合・・・vol.1はこちら
一雄、40歳代、会社。営業職のサブリーダー。若い世代を教育して、育っていくのが楽しみ。
買い物が好きだが、流行のものや、奇抜なものを買いたいとは全く思わない。定番で良質ないいものを買って、長く使うのがいちばんコストパフォーマンスがいいと思っている。飽きたり、趣味に合わなくなったら、オークションで売る(そのことも考えて、価値の下がらないいいものを買う)。自分の持っているものや身の回りのものは、かっこよくていいものだなという自負がある。(自分がかっこいいかどうかは別)
帰宅してまずするのは、靴の手入れ。

革靴が非常に好きなので、いいものを買って長く大切に履くようにしている。玄関で脱いだ靴は玄関に置かず、自室に持ち込んでいる。ほこりをとったり、クリームを塗ったり、乾燥材を入れたり、形をキープするために木型を入れたりする時間が楽しい。何年もかけて革の色や質感が変わっていったり、靴にシワが入っていくのがたまらない。靴が好きすぎることに始めは妻も驚いたり呆れたりしていたが、今は街で男性の足もとばかり見てしまい「きちんとした靴を履いていない人をみると、もっとちゃんと手入れをしたらいいのに」と思ってしまうと言っていた。

前回の記事【一雄の場合vol.2】でご紹介したように、朝の行動をルーチン化して脳に無駄な情報を入れない一雄さん。普段の生活でも、脳内の情報量が増えないように調整をしています。
流行りの物や新しい物を手に入れると脳は、興奮します。
この興奮をつくっているのが、「ドーパミン」という物質です。

ドーパミンは、脳幹(のうかん)の腹側被蓋野(ふくそくひがいや)から前頭葉に広く分泌される神経伝達物質です。ドーパミンの役割は、期待感をつくること。流行りの物や新しい物を見ると、脳内にドーパミンがぶわっと増えて、強い期待感を抱きます。
このドーパミンには、ちょっと厄介な性質があります。それは、「増える前の行動を繰り返させる」というもの。例えば、バーゲンセールで買い物をしているとします。最初は欲しい物を選んでいますが、1つ買うと、期待感をつくるドーパミンが脳内に増えます。すると、ドーパミンの作用によって、この「買う」という行動が繰り返させられるので、2つ、3つと買いたくなります。買う行為がエスカレートしていくと、洋服などの必要な物をそろえるというより、「買う」ということ自体が楽しくなってきます。買うことで気分が盛り上がり、気づいたら必要ない物まで買っていた・・・というご経験は、ありませんか?
ドーパミンのこのような作用は、ドーパミンアディクション(中毒)と呼ばれ、パチンコや買い物、アルコールやタバコなど、ある行為がやめられなくなってしまう原因になっています。ドーパミンは、期待感をつくる役割なのですが、満足感をつくることはできない物質なので、注意が必要なのです。
このドーパミンと相反する物質が、「セロトニン」です。セロトニンは、うつ病の治療薬でも使われていて、脳を緩やかに覚醒させて、突然の出来事にびっくりしないように、落ち着かせる物質です。
このセロトニンが増えているときは、ドーパミンがそれほど増えることはありません。セロトニンは、満足感をつくります。このセロトニンを増やすには、2つの方法があります。
(1) リズミカルな運動
(2) グルーミング
(1)1秒間に2~3回のテンポでリズムを刻むと、脳内にはセロトニンが増えます。私たちが日常生活でこのテンポを刻むのは、噛むことと歩くこと。
①1秒間に2~3回のテンポでリズムを刻むと、脳内にはセロトニンが増えます。私たちが日常生活でこのテンポを刻むのは、噛むことと歩くこと。

食事を良く噛んで食べたり、少し速いテンポで歩くことは、脳内にセロトニンを増やして、気分を落ち着かせ、満足感をつくることにつながります。
(2)グルーミングとは、毛づくろい行動のこと。動物が毛づくろいをするのは、脳内にセロトニンを増やし、ストレスに対処する行動なのです。私たち人間の場合は、質感の良い物に触れること、スキンシップ、談笑、同じ空間を共有することなどが該当します。
さて、良い品物を買って長く使い、革靴をこよなく愛する一雄さん。流行りの物に振り回されないようにされているのは、「ドーパミンアディクション」への対策と言えます。期待感に振り回されることを避け、気分が不要に乱されないようにされています。
そして、革靴の手入れ。この行為がグルーミングに当たります。肌触りの良い物に触れ、それを磨いたり、保湿する行為が、脳内にセロトニンを増やし、気分を安定させているのです。
一雄さんの奥さまが街の人を見て、「きちんとした靴を履いていない人をみると、もっとちゃんと手入れをしたらいいのに」と思うのは、このような人は、セロトニンが増えて満たされるような時間を持てていないように見えるからだと考えられます。ドーパミンに振り回されている人は、落着きなくどこかせかせかした印象を与えます。脳内の神経伝達物質によって、私たちの立居振舞や相手に与える印象が決まるのです。
ここでは、「ドーパミン」を悪者のようにご紹介しましたが、このドーパミンは恋愛をするためには、とても大切な役割をする物質です。「恋は盲目」と言われますが、期待感にあおられて相手にのめり込むような恋愛をするためにも、普段の生活でドーパミンを無駄遣いするのを避けてみましょう。
期待感に興奮したり、満足感を得る脳のクセを、うまく使いこなしていきましょう。
一雄、40歳代、会社。営業職のサブリーダー。若い世代を教育して、育っていくのが楽しみ。
買い物が好きだが、流行のものや、奇抜なものを買いたいとは全く思わない。定番で良質ないいものを買って、長く使うのがいちばんコストパフォーマンスがいいと思っている。飽きたり、趣味に合わなくなったら、オークションで売る(そのことも考えて、価値の下がらないいいものを買う)。自分の持っているものや身の回りのものは、かっこよくていいものだなという自負がある。(自分がかっこいいかどうかは別)
帰宅してまずするのは、靴の手入れ。

革靴が非常に好きなので、いいものを買って長く大切に履くようにしている。玄関で脱いだ靴は玄関に置かず、自室に持ち込んでいる。ほこりをとったり、クリームを塗ったり、乾燥材を入れたり、形をキープするために木型を入れたりする時間が楽しい。何年もかけて革の色や質感が変わっていったり、靴にシワが入っていくのがたまらない。靴が好きすぎることに始めは妻も驚いたり呆れたりしていたが、今は街で男性の足もとばかり見てしまい「きちんとした靴を履いていない人をみると、もっとちゃんと手入れをしたらいいのに」と思ってしまうと言っていた。

前回の記事【一雄の場合vol.2】でご紹介したように、朝の行動をルーチン化して脳に無駄な情報を入れない一雄さん。普段の生活でも、脳内の情報量が増えないように調整をしています。
流行りの物や新しい物を手に入れると脳は、興奮します。
この興奮をつくっているのが、「ドーパミン」という物質です。

ドーパミンは、脳幹(のうかん)の腹側被蓋野(ふくそくひがいや)から前頭葉に広く分泌される神経伝達物質です。ドーパミンの役割は、期待感をつくること。流行りの物や新しい物を見ると、脳内にドーパミンがぶわっと増えて、強い期待感を抱きます。
このドーパミンには、ちょっと厄介な性質があります。それは、「増える前の行動を繰り返させる」というもの。例えば、バーゲンセールで買い物をしているとします。最初は欲しい物を選んでいますが、1つ買うと、期待感をつくるドーパミンが脳内に増えます。すると、ドーパミンの作用によって、この「買う」という行動が繰り返させられるので、2つ、3つと買いたくなります。買う行為がエスカレートしていくと、洋服などの必要な物をそろえるというより、「買う」ということ自体が楽しくなってきます。買うことで気分が盛り上がり、気づいたら必要ない物まで買っていた・・・というご経験は、ありませんか?
ドーパミンのこのような作用は、ドーパミンアディクション(中毒)と呼ばれ、パチンコや買い物、アルコールやタバコなど、ある行為がやめられなくなってしまう原因になっています。ドーパミンは、期待感をつくる役割なのですが、満足感をつくることはできない物質なので、注意が必要なのです。
このドーパミンと相反する物質が、「セロトニン」です。セロトニンは、うつ病の治療薬でも使われていて、脳を緩やかに覚醒させて、突然の出来事にびっくりしないように、落ち着かせる物質です。
このセロトニンが増えているときは、ドーパミンがそれほど増えることはありません。セロトニンは、満足感をつくります。このセロトニンを増やすには、2つの方法があります。
(1) リズミカルな運動
(2) グルーミング
(1)1秒間に2~3回のテンポでリズムを刻むと、脳内にはセロトニンが増えます。私たちが日常生活でこのテンポを刻むのは、噛むことと歩くこと。
①1秒間に2~3回のテンポでリズムを刻むと、脳内にはセロトニンが増えます。私たちが日常生活でこのテンポを刻むのは、噛むことと歩くこと。

食事を良く噛んで食べたり、少し速いテンポで歩くことは、脳内にセロトニンを増やして、気分を落ち着かせ、満足感をつくることにつながります。
(2)グルーミングとは、毛づくろい行動のこと。動物が毛づくろいをするのは、脳内にセロトニンを増やし、ストレスに対処する行動なのです。私たち人間の場合は、質感の良い物に触れること、スキンシップ、談笑、同じ空間を共有することなどが該当します。
さて、良い品物を買って長く使い、革靴をこよなく愛する一雄さん。流行りの物に振り回されないようにされているのは、「ドーパミンアディクション」への対策と言えます。期待感に振り回されることを避け、気分が不要に乱されないようにされています。
そして、革靴の手入れ。この行為がグルーミングに当たります。肌触りの良い物に触れ、それを磨いたり、保湿する行為が、脳内にセロトニンを増やし、気分を安定させているのです。
一雄さんの奥さまが街の人を見て、「きちんとした靴を履いていない人をみると、もっとちゃんと手入れをしたらいいのに」と思うのは、このような人は、セロトニンが増えて満たされるような時間を持てていないように見えるからだと考えられます。ドーパミンに振り回されている人は、落着きなくどこかせかせかした印象を与えます。脳内の神経伝達物質によって、私たちの立居振舞や相手に与える印象が決まるのです。
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期待感に興奮したり、満足感を得る脳のクセを、うまく使いこなしていきましょう。
NEWS ◇著者新刊のお知らせ◇
コラム「クセ活用術」の著者・菅原洋平さんの新著が、2013年11月2日に発行されました。

『仕事力が上がる 睡眠の超技法』
(祥伝社/1365円)
眠りの習慣をほんの少し変えるだけで仕事力がアップ!?
企業や医療現場で実証済みの「スリープ・マネジメント」とは?
菅原さんによる、【起きている間の能力を活かすための睡眠】は必読です!
詳しくはこちら(Amazonの紹介ページ)
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Posted by 日刊いーしず at 12:00
2013年11月07日
第5回 里美の場合vol.2
里美の場合・・・vol.1はこちら
里美、34歳、会社員。内勤の事務職で、広告営業マンのサポートを行っている。営業マンからもサポートスタッフからも頼られる「姐さん」的なポジション。
◆ある退社後の夜/
仕事後、高校の同窓会会場の下見に行った。幹事なので。よく同窓会の幹事を頼まれる。周りから向いていると思われており、幹事をやれとよく言われる。めんどくさいと思うが、久々に会う人と一緒にやるのはなんだかんだで面白いのでやっている。
会場の下見の後、幹事仲間と飲みに行く。高校時代の昔話などをする。楽しい。2時間ほど飲む。

高校時代の同級生に会うと、時間が戻ったようで日常からはなれて楽しく話せる。話した後は気持ちがスッキリする。

よく同窓会の幹事を引き受ける里美さん。自分でも面白いと感じていますが、脳にとっては面白い以上に価値のある時間です。
私たちの脳は、過去を思い出しているときに、同時に未来を想像しています。逆に、未来を想像するときは、過去を思い出しています。例えば、新年の抱負を言うときには「(昨年は○○ができなかったから)今年は○○を達成する!」というように、( )内の部分を思い出してから、それにしたがって未来の行動を計画するという仕組みなのです。
脳の中では、過去を思い出しているときも、未来を想像しているときも、内側前頭葉、内側側頭葉、内側頭頂葉によってつくられる、「内側ネットワーク」が活発になります。

内側側頭葉は、過去の記憶を貯蔵している部位です。内側頭頂葉は、見たり聞いたり触ったりした感覚を司っています。そして、内側前頭葉は、未来の行動を計画しています。過去の記憶と、そのときどんな感じだったかという感覚を照合し、それにしたがって未来の行動計画を立てるというように、脳の中で連携をしているのです。
さて、里美さん。面白いから引き受けている同窓会の幹事は、脳にとっては、これからどんな生活をしていこうかと考えるという作用があります。自分のやりたいことや、今やるべきこと、自分しかできないことを模索しながら、これからの自分を考えようとすると、「一体自分は何がしたいんだろう・・・」と分からなくなってしまうことがあります。またそんなときは、頑張ろうと思うほど空回りしてしまって、何をやってもうまくいかないと思ってしまいがちです。
「未来が見えないな・・・」と思ったら、そのときは、脳の中の過去がうまく整理されていません。過去の記憶は非常にあいまいで、気分によって美しい記憶に飾り付けされたり、思い出したくない記憶に加工されたりします。あいまいな記憶のままでは、あいまいな未来しか想像できません。
そんなとき、自分のことを客観的に見てきた友人たちの話から、記憶が整理されると、これから先のことが見えてきて、気持ちがスッキリすることがあります。脳にとって、懐かしい友人たちとの会話は、自分らしく生きるための活動でもあるのです。
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里美、34歳、会社員。内勤の事務職で、広告営業マンのサポートを行っている。営業マンからもサポートスタッフからも頼られる「姐さん」的なポジション。
◆ある退社後の夜/
仕事後、高校の同窓会会場の下見に行った。幹事なので。よく同窓会の幹事を頼まれる。周りから向いていると思われており、幹事をやれとよく言われる。めんどくさいと思うが、久々に会う人と一緒にやるのはなんだかんだで面白いのでやっている。
会場の下見の後、幹事仲間と飲みに行く。高校時代の昔話などをする。楽しい。2時間ほど飲む。

高校時代の同級生に会うと、時間が戻ったようで日常からはなれて楽しく話せる。話した後は気持ちがスッキリする。

よく同窓会の幹事を引き受ける里美さん。自分でも面白いと感じていますが、脳にとっては面白い以上に価値のある時間です。
私たちの脳は、過去を思い出しているときに、同時に未来を想像しています。逆に、未来を想像するときは、過去を思い出しています。例えば、新年の抱負を言うときには「(昨年は○○ができなかったから)今年は○○を達成する!」というように、( )内の部分を思い出してから、それにしたがって未来の行動を計画するという仕組みなのです。
脳の中では、過去を思い出しているときも、未来を想像しているときも、内側前頭葉、内側側頭葉、内側頭頂葉によってつくられる、「内側ネットワーク」が活発になります。

内側側頭葉は、過去の記憶を貯蔵している部位です。内側頭頂葉は、見たり聞いたり触ったりした感覚を司っています。そして、内側前頭葉は、未来の行動を計画しています。過去の記憶と、そのときどんな感じだったかという感覚を照合し、それにしたがって未来の行動計画を立てるというように、脳の中で連携をしているのです。
さて、里美さん。面白いから引き受けている同窓会の幹事は、脳にとっては、これからどんな生活をしていこうかと考えるという作用があります。自分のやりたいことや、今やるべきこと、自分しかできないことを模索しながら、これからの自分を考えようとすると、「一体自分は何がしたいんだろう・・・」と分からなくなってしまうことがあります。またそんなときは、頑張ろうと思うほど空回りしてしまって、何をやってもうまくいかないと思ってしまいがちです。
「未来が見えないな・・・」と思ったら、そのときは、脳の中の過去がうまく整理されていません。過去の記憶は非常にあいまいで、気分によって美しい記憶に飾り付けされたり、思い出したくない記憶に加工されたりします。あいまいな記憶のままでは、あいまいな未来しか想像できません。
そんなとき、自分のことを客観的に見てきた友人たちの話から、記憶が整理されると、これから先のことが見えてきて、気持ちがスッキリすることがあります。脳にとって、懐かしい友人たちとの会話は、自分らしく生きるための活動でもあるのです。
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Posted by 日刊いーしず at 12:00