2014年02月20日
第12回 一雄の場合vol.4
一雄の場合・・・過去の記事はこちら。 一雄vol.1/一雄vol.2 / 一雄vol.3
一雄、40歳代、会社員。営業職のサブリーダー。若い世代を教育して、育っていくのが楽しみ。
人に何かを教えたり、若い世代がそれによって成長していくのを見るのが好き。現在の仕事の上でも、教育や指導をしたり、講師としてセミナーで話をしたりといった場面はあるが、もっと直接的に「教える」ということを自分の仕事にできないかと考えている。今すぐではなくても、たとえば定年後にでも。
大学で教員免許を取得しており、これまでに教職に就いたことはないが、そういったことに年々興味が増してきている。
教えられているときよりも、人に教えているときの方が、物事が身につくことは、みなさんも経験があるのではないでしょうか。
教える、学ぶ、という場面では、「インプット」と「アウトプット」という言葉が使われます。
「勉強(インプット)したら、誰かに話す(アウトプット)するといいよ」
こんな言葉はよく耳にします。
実は、私たちの脳は、「インプット→アウトプット」の順番ではなく、「アウトプット→インプット」の順番で構成されています。
これはジェネラルムーブメントと呼ばれ、赤ちゃんを観察していると良くわかります。
赤ちゃんは、見た物に手を伸ばすのではなく、手を動かしていて触れた物を見ます。つまり、先に行動があり、それによって何らかの感覚を得るのです。
この「アウトプット→インプット」のサイクルがうまく回ると、私たちの脳は大きく成長します。「行動して得た感覚から次の行動を決める」というサイクルです。
このサイクルをうまく回すために、私たちが使っている機能が予測です。
例えば、新しく社員を雇おうと求人広告を出し、予測した結果と大きく外れた事態が起こると、脳は混乱します。頭が真っ白な感じです。
この混乱を避けるために、過去の記憶を積み重ねていき、精度の高い予測ができるようになる。これが、脳の成長です。
さて、教育に年々関心が強まっている一雄さん。
教育の場面では、「アウトプット→インプット」の順番です。自分が「教える」という行動をするときには、それをした結果どうなるのかを予測します。
予測に近い結果が得られると、成功です。脳は、この成功を報酬としてとらえるので、さらにその行動を続けたくなります。 しかし、いつも予測通りの結果だと、脳の報酬系が慣れてしまい、つまらなくなってきてしまいます。
ここで、予測から大きく外れた結果が必要なのです。
予測を大きく外れることで、それを記憶し、次の行動に反映させる。これが自分の脳を成長させるためには最適な環境です。
人が育つのを見たい。その場面を増やしていくことが、生涯一雄さん自身を成長させることになるはずです。
一雄、40歳代、会社員。営業職のサブリーダー。若い世代を教育して、育っていくのが楽しみ。
人に何かを教えたり、若い世代がそれによって成長していくのを見るのが好き。現在の仕事の上でも、教育や指導をしたり、講師としてセミナーで話をしたりといった場面はあるが、もっと直接的に「教える」ということを自分の仕事にできないかと考えている。今すぐではなくても、たとえば定年後にでも。
大学で教員免許を取得しており、これまでに教職に就いたことはないが、そういったことに年々興味が増してきている。
教えられているときよりも、人に教えているときの方が、物事が身につくことは、みなさんも経験があるのではないでしょうか。
教える、学ぶ、という場面では、「インプット」と「アウトプット」という言葉が使われます。
「勉強(インプット)したら、誰かに話す(アウトプット)するといいよ」
こんな言葉はよく耳にします。
実は、私たちの脳は、「インプット→アウトプット」の順番ではなく、「アウトプット→インプット」の順番で構成されています。
これはジェネラルムーブメントと呼ばれ、赤ちゃんを観察していると良くわかります。
赤ちゃんは、見た物に手を伸ばすのではなく、手を動かしていて触れた物を見ます。つまり、先に行動があり、それによって何らかの感覚を得るのです。
この「アウトプット→インプット」のサイクルがうまく回ると、私たちの脳は大きく成長します。「行動して得た感覚から次の行動を決める」というサイクルです。
このサイクルをうまく回すために、私たちが使っている機能が予測です。
例えば、新しく社員を雇おうと求人広告を出し、予測した結果と大きく外れた事態が起こると、脳は混乱します。頭が真っ白な感じです。
この混乱を避けるために、過去の記憶を積み重ねていき、精度の高い予測ができるようになる。これが、脳の成長です。
さて、教育に年々関心が強まっている一雄さん。
教育の場面では、「アウトプット→インプット」の順番です。自分が「教える」という行動をするときには、それをした結果どうなるのかを予測します。
予測に近い結果が得られると、成功です。脳は、この成功を報酬としてとらえるので、さらにその行動を続けたくなります。 しかし、いつも予測通りの結果だと、脳の報酬系が慣れてしまい、つまらなくなってきてしまいます。
ここで、予測から大きく外れた結果が必要なのです。
予測を大きく外れることで、それを記憶し、次の行動に反映させる。これが自分の脳を成長させるためには最適な環境です。
人が育つのを見たい。その場面を増やしていくことが、生涯一雄さん自身を成長させることになるはずです。
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2014年02月06日
第11回 里美の場合vol.4
里美の場合・・・過去の記事はこちら。 里美vol.1/里美vol.2/里美vol.3
里美、34歳、会社員。内勤の事務職で、広告営業マンのサポートを行っている。営業マンからもサポートスタッフからも頼られる「姐さん」的なポジション。
・何かを自分で作りたい、と思う気持ちが強くある。それが何なのか、何ができるかわからないけれど、自分が「いいな」と思うものを作ったり集めたりしたい。そういうことに携わりたい。そう思って、夏季休暇を移用してスウェーデンの学校に一週間通って、布を染めたりするコースを学ぶことにした。
・雑誌の切り抜き(自分の好きなものがのっている)を集めている。
・山の方、自然の中、緑の中で暮らしたいと強く思う。
・部屋に花びんを置いて、葉っぱを育てている
きれいな物、自分の好きな物に囲まれて暮らしたい。
そんな思いを持つ方は多いのではないでしょうか。
私たちの脳は、きれいな物を見るとどんな反応をするのでしょうか。
きれいな物や美しい景色、きれいな絵画や人の顔などを見たときは、脳の前方にある前頭葉の下、眼窩部が活発になります。
この部位が障害されると、食事をしようとさえしなくなってしまいます。
前頭葉の眼窩部は、人間の根本的な意欲(発動性と呼ばれます)を司っています。
この前頭葉眼窩部は、活発になったときに脳が「報酬」だと感知して、さらにその行動を強化するサイクルを生み出します。
脳が「報酬」として受け取るのは次の3種類に分かれます。
1 条件づけなどに関連する学習部分
2 好みや快などに関連する感情部分
3 欲求や目標設定などに関連する動機成分
きれいな物を見たときの報酬は②です。
「いいなー」「きれいだなー」という快の感情によって、私たちはいつまで見ていても飽きない、ということになります。
さらに、きれいな物を見るのは、創造性を生み出すことにもつながると考えられています。
創造性の高い人は、きれいな物を見たときに、空間認知に関わる下頭頂葉の活動が低く、前頭前野の活動が活発に。
これは、物を見たままとらえるより、脳の中で加工して新しいものを生み出しているということです。この脳の働きは、教育を受けることによって活発になります。「きれい」を見て、そこから創造性を発揮することは、トレーニングできるということですね。
さて、里美さんは、新たなチャレンジを試みています。教室に通うことで、より「きれい」が見られるようになり、そこからさらに暮らしを良くするアイデアがひらめくようになりそう。
Vol.1でもご紹介したように、里美さんは、物事を理解するのに「視覚」を強く活用するタイプ。
よりバランスよく充実するためには、手の感触など「体性感覚」を使うと良いということでした。
染物の教室は最適な選択ですね!
きれいな物に囲まれるとやる気が出る。また、それはトレーニングできるということが分かった里美さんは、これからますます、自分らしい生活を実現できそうです。
里美、34歳、会社員。内勤の事務職で、広告営業マンのサポートを行っている。営業マンからもサポートスタッフからも頼られる「姐さん」的なポジション。
・何かを自分で作りたい、と思う気持ちが強くある。それが何なのか、何ができるかわからないけれど、自分が「いいな」と思うものを作ったり集めたりしたい。そういうことに携わりたい。そう思って、夏季休暇を移用してスウェーデンの学校に一週間通って、布を染めたりするコースを学ぶことにした。
・雑誌の切り抜き(自分の好きなものがのっている)を集めている。
・山の方、自然の中、緑の中で暮らしたいと強く思う。
・部屋に花びんを置いて、葉っぱを育てている
きれいな物、自分の好きな物に囲まれて暮らしたい。
そんな思いを持つ方は多いのではないでしょうか。
私たちの脳は、きれいな物を見るとどんな反応をするのでしょうか。
きれいな物や美しい景色、きれいな絵画や人の顔などを見たときは、脳の前方にある前頭葉の下、眼窩部が活発になります。
この部位が障害されると、食事をしようとさえしなくなってしまいます。
前頭葉の眼窩部は、人間の根本的な意欲(発動性と呼ばれます)を司っています。
この前頭葉眼窩部は、活発になったときに脳が「報酬」だと感知して、さらにその行動を強化するサイクルを生み出します。
脳が「報酬」として受け取るのは次の3種類に分かれます。
1 条件づけなどに関連する学習部分
2 好みや快などに関連する感情部分
3 欲求や目標設定などに関連する動機成分
きれいな物を見たときの報酬は②です。
「いいなー」「きれいだなー」という快の感情によって、私たちはいつまで見ていても飽きない、ということになります。
さらに、きれいな物を見るのは、創造性を生み出すことにもつながると考えられています。
創造性の高い人は、きれいな物を見たときに、空間認知に関わる下頭頂葉の活動が低く、前頭前野の活動が活発に。
これは、物を見たままとらえるより、脳の中で加工して新しいものを生み出しているということです。この脳の働きは、教育を受けることによって活発になります。「きれい」を見て、そこから創造性を発揮することは、トレーニングできるということですね。
さて、里美さんは、新たなチャレンジを試みています。教室に通うことで、より「きれい」が見られるようになり、そこからさらに暮らしを良くするアイデアがひらめくようになりそう。
Vol.1でもご紹介したように、里美さんは、物事を理解するのに「視覚」を強く活用するタイプ。
よりバランスよく充実するためには、手の感触など「体性感覚」を使うと良いということでした。
染物の教室は最適な選択ですね!
きれいな物に囲まれるとやる気が出る。また、それはトレーニングできるということが分かった里美さんは、これからますます、自分らしい生活を実現できそうです。
NEWS ◇著者新刊のお知らせ◇
コラム「クセ活用術」の著者・菅原洋平さんの新著が、2014年1月31日に発行されました。
『ここぞというときに力が出せる睡眠の3鉄則』
(主婦と生活社/1365円)
科学的な根拠に基づいて、3つのことをやめる。
それだけで、眠るのが楽しくなってくる!?
楽しめる眠りと充実した人生、どちらもほしい人は必読です!
詳しくはこちら(Amazonの紹介ページ)
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『ここぞというときに力が出せる睡眠の3鉄則』
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科学的な根拠に基づいて、3つのことをやめる。
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詳しくはこちら(Amazonの紹介ページ)
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2014年01月23日
第10回 英子の場合vol.4
英子の場合・・・過去の記事はこちら。 英子vol.1/英子vol.2/英子vol.3
英子、29歳、会社員。肩書はあるセクションの長。
今の仕事はパッとひらめいたアイデアが形になっていくのが面白いし、重要なポジションにやりがいも感じている。自分自身でどっしり腰を据えて面白いものを書いてみたいとも思っている。それが何なのかはハッキリ分からず、毎日忙しく生活している。
自信はある。やってみたい!チャレンジをしてみたい!
これまでの「脳のクセ活用」で、自分のペースを乱されることや自分の仕事に手を加えられることも、自分を成長させていることが分かってきた。自分の気持ちが先に走り過ぎると、他人のアドバイスから新しい発見できなくなってしまう。
自分のルールを他人に乱されることで、自分が思い描いていたものよりも、もっと面白い結果が生まれるのかも!
何でも自分で解決しようと思っていた英子さんは、自分以外のやり方で良い結果が生まれることがあることも分かった様子ですね。
人間の脳は、いつも通りのパターンを崩されたときに、大きく成長します。
脳は、エネルギーを貯蓄できない構造なので、常に消費し続けます。
膨大なエネルギーを消費するので、省エネで働けるように、一度通った神経の道をパターン化して、いつも同じ道を通るようにしています。
他人にペースを乱されると、このパターンが崩されるので、「どうしよう!」とバタバタと普段使わない神経を動員して、何とか解決に導こうとします。
この普段を違うパターンで働いたときに、今までと同じパターンでは解決できなかった新しいパターンが生まれるのです。
極端な例では、右手を動かす左の脳を事故で損傷すると、左手を動かす右の脳で、右手を動かすように働きます。私たち、リハビリテーションの専門職は、脳が大きなダメージを受けたことによって、新しいパターンを創り出そうとしているのを助けているのです。
新しいパターンを学習すると、自分には出来ないと思っていたことが、違う形でできることに気づきます。脳の神経が遠回りをしたことで、狭くなっていた視野が広がり、自分が本当に求めることへの最短距離が見つかるのです。
脳は、新しいパターンを生み出した後、睡眠中に、生み出すまでのバタバタと無駄に使った神経を排除し、その道を主要な道路に作り変えます。
私たちは、毎日この作業を通して成長し続けているのです。
自分の考えを変えられるのが苦手だったのは、大量のエネルギーを消費するからだということ。その消費の先には、新しい自分の脳が出来上がると思うと、他人に乱されること自体も、楽しくなってきますね。
夢に向かって進む英子さん。ひょんなことから目標への行動を他人に邪魔されることがあるかもしれませんが、そのときが本当に前進するときです。
英子、29歳、会社員。肩書はあるセクションの長。
今の仕事はパッとひらめいたアイデアが形になっていくのが面白いし、重要なポジションにやりがいも感じている。自分自身でどっしり腰を据えて面白いものを書いてみたいとも思っている。それが何なのかはハッキリ分からず、毎日忙しく生活している。
自信はある。やってみたい!チャレンジをしてみたい!
これまでの「脳のクセ活用」で、自分のペースを乱されることや自分の仕事に手を加えられることも、自分を成長させていることが分かってきた。自分の気持ちが先に走り過ぎると、他人のアドバイスから新しい発見できなくなってしまう。
自分のルールを他人に乱されることで、自分が思い描いていたものよりも、もっと面白い結果が生まれるのかも!
何でも自分で解決しようと思っていた英子さんは、自分以外のやり方で良い結果が生まれることがあることも分かった様子ですね。
人間の脳は、いつも通りのパターンを崩されたときに、大きく成長します。
脳は、エネルギーを貯蓄できない構造なので、常に消費し続けます。
膨大なエネルギーを消費するので、省エネで働けるように、一度通った神経の道をパターン化して、いつも同じ道を通るようにしています。
他人にペースを乱されると、このパターンが崩されるので、「どうしよう!」とバタバタと普段使わない神経を動員して、何とか解決に導こうとします。
この普段を違うパターンで働いたときに、今までと同じパターンでは解決できなかった新しいパターンが生まれるのです。
極端な例では、右手を動かす左の脳を事故で損傷すると、左手を動かす右の脳で、右手を動かすように働きます。私たち、リハビリテーションの専門職は、脳が大きなダメージを受けたことによって、新しいパターンを創り出そうとしているのを助けているのです。
新しいパターンを学習すると、自分には出来ないと思っていたことが、違う形でできることに気づきます。脳の神経が遠回りをしたことで、狭くなっていた視野が広がり、自分が本当に求めることへの最短距離が見つかるのです。
脳は、新しいパターンを生み出した後、睡眠中に、生み出すまでのバタバタと無駄に使った神経を排除し、その道を主要な道路に作り変えます。
私たちは、毎日この作業を通して成長し続けているのです。
自分の考えを変えられるのが苦手だったのは、大量のエネルギーを消費するからだということ。その消費の先には、新しい自分の脳が出来上がると思うと、他人に乱されること自体も、楽しくなってきますね。
夢に向かって進む英子さん。ひょんなことから目標への行動を他人に邪魔されることがあるかもしれませんが、そのときが本当に前進するときです。
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2014年01月09日
第9回 一雄の場合vol.3
一雄の場合・・・過去の記事はこちら。 一雄vol.1/一雄vol.2
一雄、40歳代、会社員。営業職のサブリーダー。若い世代を教育して、育っていくのが楽しみ。
・いろんなことをいっぺんにやろうとして、いろいろ忘れている気がする。たとえば帰宅してから「あのメールに返信したかな?」と気になるが思い出せない。確かめようとしてパソコンを開くが、確かめる前にまた別のことを思い出してやり始めてしまったり。忘れないようにメモをとるようにしているが、メモをしたかどうかも自信がないときがある。
・取引先とのあまり気楽ではない飲み会があり、名目的にはざっくばらんな飲み会という体裁だが、実際にはいろいろと気を遣った。自分はお酒は飲まないが、性格的には自他ともに認めるムードメーカーであるので、みんなが楽しんでいるか、ちゃんと話せているか、誰も飽きていないかをそれとなく気にしながら場を盛り上げていた。上司が口下手な分、サブリーダーである自分がいろいろとフォロー。仕事ではあるが、飲みたくもない飲み会で時間とお金を使うことに腑が落ちない気持ちになった。
部屋に入ってくるなり「あれ?何しに来たんだっけ?」と言う。
そんなことはありませんか?
これは「物忘れ」とは違い、脳の中が情報過多になっているサインです。
皆さんの中には、できるだけたくさんの情報を脳に入れた方がよいと思っている方もいらっしゃるかもしれません。暇を見つけては、スマホでニュースをチェックしたり、検索した結果をWeb上にストックするなど、大量の情報を目にする機会を意図的につくっている方も多いと思います。
私たちの脳は、情報が入ってきさえすれば、その情報を活用できるわけではありません。入ってきた情報が使える情報になるには、脳の中で精度の高い情報に絞り込む作業が必要です。
脳内の情報の精度を高める作業は、「感覚→知覚→認知→行動」のサイクルをぐるぐる回しながら行われます。
例えば、机の上にコップが置いてあると、触って(感覚)感触や重みを感じ(知覚)コップだと理解し(認知)口にもっていく(行動)。というサイクルです。
このサイクルが回ると、ただの物体から「飲み物を飲むコップ」であるという高い精度の情報に変わるので、コップを見て手を伸ばしただけで、コップを持つにふさわしい手の形が勝手につくられます。
高い精度の情報は、私たちの作業効率を高めます。脳内の情報の精度を上げるには、このサイクルをぐるぐる回して、遠心分離器のように無駄な情報をそぎ落としていかなければなりません。
例えば、テレビを見ながら食事する。
私たちはその方が効率が良いと思って、いわゆる「マルチタスク」の状況をつくります。
しかし、この行為が、脳内に不必要な情報を取り込み、脳の働きを鈍くさせるのです。
マルチタスクは、私たちの生活にとって不可欠です。仕事が忙しい、家事をしながら子育てをするなど、マルチタスクを迫られる機会はとても多いです。
大切なことは、本当に必要なこと以外のマルチタスク場面をつくらないことです。
平均的な1日で、自分がやっていることを箇条書きにしてみてください。
そこに「重要度」を10点満点でつけます。
最も低く点数がついたことを、やらないようにしてみます。
こうすることで、私たちの脳は、格段に働きが良くなるのです。
さて、一雄さんは、仕事場面で随分とマルチタスクを求められています。飲み会のときまで、周囲に気を配らなければならない。脳の中は精度が低い情報がいっぱいで、どれも使える情報になりにくくなってしまいます。これによって、忘れることが多くなっているのです。
そこで、「情報断食」をおすすめします。
休日の半日か1日、まったくメディアに触れない時間をつくってみましょう。テレビ、音楽、映画、スマホなど、メディアに触れない時間をつくることで、脳のサイクルは回りだし、脳内の情報の精度は上がっていきます。
脳に入る情報を制限する。情報があふれている世の中には、情報を使いこなす技術が求められています。
一雄、40歳代、会社員。営業職のサブリーダー。若い世代を教育して、育っていくのが楽しみ。
・いろんなことをいっぺんにやろうとして、いろいろ忘れている気がする。たとえば帰宅してから「あのメールに返信したかな?」と気になるが思い出せない。確かめようとしてパソコンを開くが、確かめる前にまた別のことを思い出してやり始めてしまったり。忘れないようにメモをとるようにしているが、メモをしたかどうかも自信がないときがある。
・取引先とのあまり気楽ではない飲み会があり、名目的にはざっくばらんな飲み会という体裁だが、実際にはいろいろと気を遣った。自分はお酒は飲まないが、性格的には自他ともに認めるムードメーカーであるので、みんなが楽しんでいるか、ちゃんと話せているか、誰も飽きていないかをそれとなく気にしながら場を盛り上げていた。上司が口下手な分、サブリーダーである自分がいろいろとフォロー。仕事ではあるが、飲みたくもない飲み会で時間とお金を使うことに腑が落ちない気持ちになった。
部屋に入ってくるなり「あれ?何しに来たんだっけ?」と言う。
そんなことはありませんか?
これは「物忘れ」とは違い、脳の中が情報過多になっているサインです。
皆さんの中には、できるだけたくさんの情報を脳に入れた方がよいと思っている方もいらっしゃるかもしれません。暇を見つけては、スマホでニュースをチェックしたり、検索した結果をWeb上にストックするなど、大量の情報を目にする機会を意図的につくっている方も多いと思います。
私たちの脳は、情報が入ってきさえすれば、その情報を活用できるわけではありません。入ってきた情報が使える情報になるには、脳の中で精度の高い情報に絞り込む作業が必要です。
脳内の情報の精度を高める作業は、「感覚→知覚→認知→行動」のサイクルをぐるぐる回しながら行われます。
例えば、机の上にコップが置いてあると、触って(感覚)感触や重みを感じ(知覚)コップだと理解し(認知)口にもっていく(行動)。というサイクルです。
このサイクルが回ると、ただの物体から「飲み物を飲むコップ」であるという高い精度の情報に変わるので、コップを見て手を伸ばしただけで、コップを持つにふさわしい手の形が勝手につくられます。
高い精度の情報は、私たちの作業効率を高めます。脳内の情報の精度を上げるには、このサイクルをぐるぐる回して、遠心分離器のように無駄な情報をそぎ落としていかなければなりません。
例えば、テレビを見ながら食事する。
私たちはその方が効率が良いと思って、いわゆる「マルチタスク」の状況をつくります。
しかし、この行為が、脳内に不必要な情報を取り込み、脳の働きを鈍くさせるのです。
マルチタスクは、私たちの生活にとって不可欠です。仕事が忙しい、家事をしながら子育てをするなど、マルチタスクを迫られる機会はとても多いです。
大切なことは、本当に必要なこと以外のマルチタスク場面をつくらないことです。
平均的な1日で、自分がやっていることを箇条書きにしてみてください。
そこに「重要度」を10点満点でつけます。
最も低く点数がついたことを、やらないようにしてみます。
こうすることで、私たちの脳は、格段に働きが良くなるのです。
さて、一雄さんは、仕事場面で随分とマルチタスクを求められています。飲み会のときまで、周囲に気を配らなければならない。脳の中は精度が低い情報がいっぱいで、どれも使える情報になりにくくなってしまいます。これによって、忘れることが多くなっているのです。
そこで、「情報断食」をおすすめします。
休日の半日か1日、まったくメディアに触れない時間をつくってみましょう。テレビ、音楽、映画、スマホなど、メディアに触れない時間をつくることで、脳のサイクルは回りだし、脳内の情報の精度は上がっていきます。
脳に入る情報を制限する。情報があふれている世の中には、情報を使いこなす技術が求められています。
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2013年12月19日
第8回 里美の場合vol.3
里美の場合・・・過去の記事はこちら。 里美vol.1/里美vol.2
里美、34歳、会社員。内勤の事務職で、広告営業マンのサポートを行っている。営業マンからもサポートスタッフからも頼られる「姐さん」的なポジション。
◆ある1日の様子/
・旦那さんが出張で不在の時、何もやる気が出なくなる。何もしないで部屋でテレビだけを見て夜更かしをしてしまう。
旦那さんがいるときは家事などもまったくイヤではなくできるのに、ひとりのときはスイッチが入らない。そんなときでも、仕事のスイッチは会社に来るとすぐに入る。常にやる気がなくなるわけではないのに、どうしてひとりになると体が動かなくなってしまんだろう。
いつもは仕事も家事も難なくこなせる里美さん。ひとりの時間になるとなぜかやる気がなくなってしまう。これは、性格や意思の強さではなく、脳のクセが原因です。
脳がやる気になるには、ある条件があります。
脳は、「50%は経験済みだけど、残りの50%はやってみないと分からない」という状況でやる気になります。これは『発達の最近接領域』と呼ばれ、私たちが日々成長するためにとても重要な脳のクセです。
経験済みのことを前にすると、脳は、それをやれば結果がどうなるのか、おおむね予測が立ちます。脳が結果を予測できる行動は、すでに脳の中では「自動化」された行動です。何も考えずに実行することができるので、「退屈」してしまい、やる気は起こりません。
一方で、経験済みのことが極端に少ない課題に直面したときは、全然予測が立ちません。脳が予測できない状況を、私たちは「ストレス」と呼びます。何から手を付けて良いのかわからない状況になるとストレスを感じてイライラしたり無気力になるなど、やる気は起こりません。
例えば、共同作業をするときに、相手から一方的にやり方を押しつけられる場合は、予測できないことが多いのでストレスを感じ、やる気が起こりません。でも、相手が自分のやり方に全然関心を持たない場合でも、退屈になってしまい、やる気が起こらないというわけです。
何か新しいことに挑戦するときは、いつも一緒にいる人にサポートしてもらう。いつも同じ作業でマンネリ化しているときは、いつもと違う人とペアで作業をしてみる。このようなちょっとした工夫をすれば、脳は無理なくやる気になります。
さて、里美さんがいつも難なく目の前のことをこなせているのは、自分だけで解決できることに旦那さんや職場の人が予想外のことを持ちかける可能性がある状況、つまり『発達の最近接領域』にあるからです。
旦那さんは、自分のやり方を強く要求したり、または里美さんのやり方に完全に無関心なわけではないので、適度に「やってみないと分からない」状況をつくってくれているパートナーだと言えます。
日常的に『発達の最近接領域』を作られている要因がなくなると、パタッとやる気がなくなってしまう。旦那さんがいないと何もやる気が出ない。でも、仕事場に行けばすぐにやる気になる。
これは、気のゆるみではなく、脳のクセが影響していたということです。自分にとって『発達の最近接領域』をつくってくれる人を、大切にしたいですね。
里美、34歳、会社員。内勤の事務職で、広告営業マンのサポートを行っている。営業マンからもサポートスタッフからも頼られる「姐さん」的なポジション。
◆ある1日の様子/
・旦那さんが出張で不在の時、何もやる気が出なくなる。何もしないで部屋でテレビだけを見て夜更かしをしてしまう。
旦那さんがいるときは家事などもまったくイヤではなくできるのに、ひとりのときはスイッチが入らない。そんなときでも、仕事のスイッチは会社に来るとすぐに入る。常にやる気がなくなるわけではないのに、どうしてひとりになると体が動かなくなってしまんだろう。
いつもは仕事も家事も難なくこなせる里美さん。ひとりの時間になるとなぜかやる気がなくなってしまう。これは、性格や意思の強さではなく、脳のクセが原因です。
脳がやる気になるには、ある条件があります。
脳は、「50%は経験済みだけど、残りの50%はやってみないと分からない」という状況でやる気になります。これは『発達の最近接領域』と呼ばれ、私たちが日々成長するためにとても重要な脳のクセです。
経験済みのことを前にすると、脳は、それをやれば結果がどうなるのか、おおむね予測が立ちます。脳が結果を予測できる行動は、すでに脳の中では「自動化」された行動です。何も考えずに実行することができるので、「退屈」してしまい、やる気は起こりません。
一方で、経験済みのことが極端に少ない課題に直面したときは、全然予測が立ちません。脳が予測できない状況を、私たちは「ストレス」と呼びます。何から手を付けて良いのかわからない状況になるとストレスを感じてイライラしたり無気力になるなど、やる気は起こりません。
例えば、共同作業をするときに、相手から一方的にやり方を押しつけられる場合は、予測できないことが多いのでストレスを感じ、やる気が起こりません。でも、相手が自分のやり方に全然関心を持たない場合でも、退屈になってしまい、やる気が起こらないというわけです。
何か新しいことに挑戦するときは、いつも一緒にいる人にサポートしてもらう。いつも同じ作業でマンネリ化しているときは、いつもと違う人とペアで作業をしてみる。このようなちょっとした工夫をすれば、脳は無理なくやる気になります。
さて、里美さんがいつも難なく目の前のことをこなせているのは、自分だけで解決できることに旦那さんや職場の人が予想外のことを持ちかける可能性がある状況、つまり『発達の最近接領域』にあるからです。
旦那さんは、自分のやり方を強く要求したり、または里美さんのやり方に完全に無関心なわけではないので、適度に「やってみないと分からない」状況をつくってくれているパートナーだと言えます。
日常的に『発達の最近接領域』を作られている要因がなくなると、パタッとやる気がなくなってしまう。旦那さんがいないと何もやる気が出ない。でも、仕事場に行けばすぐにやる気になる。
これは、気のゆるみではなく、脳のクセが影響していたということです。自分にとって『発達の最近接領域』をつくってくれる人を、大切にしたいですね。
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2013年12月05日
第7回 英子の場合vol.3
英子の場合・・・過去の記事はこちら。 英子vol.1/英子vol.2
英子、29歳、会社員。肩書はあるセクションの長。
上司から任されているはずの企画に最終段階で修正が入る。「結局自分に任せてくれていないのか・・・」と苛立つ。上司からは「悪いね」と言いつつ「でもやってね」と。これでは何も言えなくなる。自分で企画をつくる面白さが分かって自信もついてきた。でも、任されていないと気づくと、ガクッとやる気がなくなってしまう。
自分は面白い企画をつくれると思う。今はそれに対して具体的なアクションはしていないが、やってみたいことがある。誰にも話していないけど、その夢をいつか現実にする。
上司からの修正にガクッとやる気をなくしてしまった英子さん。
私たちは、仕事を一任されると責任感とともにやる気もわきます。上司の立場では、部下のやる気を引き出しつつ、作業の軌道修正をしたいもの。お互いにやる気をもって仕事をしたいと思っているのに、結果的に英子さんはやる気をそがれてしまいました。
実は、このコミュニケーションのすれ違いには、男女の脳の違いが関係しています。
男性の脳と女性の脳は、解剖学的に構造が違います。
例えば、女性は男性に比べて創造性をつかさどる前頭葉が大きい。一方男性は、敵を発見して体の準備をする扁桃体(へんとうたい)や視床下部(ししょうかぶ)が大きいことが知られています。
そのような男女の脳の違いがもっとも顕著にみられるのが、感覚性言語野(かんかくせいげんごや)。女性はこの部分が男性より平均12%も神経の密度が濃いのです。
感覚性言語野が担っている役割は、「共感」すること。話の内容や文章を理解する力が、女性の方が得意な傾向があります。女性には共感が大切。そういえば、人気店やベストセラーは、女性の口コミによって生まれますよね。女性は、相手が話した内容を、脳内で「あたかも自分が体験した」ように感じとることができるのです。
一方で、この「共感」が弱い男性は、ものごとを関連付けることで理解しようとします。つまり、男性には因果関係が大切なのです。
この脳の違いは、作業を進めるときの声をかけるタイミングによく現れます。
女性の脳は、相手の行動から意図を察することが得意です。任せた作業の途中で、「面白そうだね」と声をかけると、自分の作業に関心をもっていることが伝わり、やる気が出やすい傾向があります。
作業を修正させたいならば、「こうするともっと面白いかも」と、途中でアイデアを投げかけるのも良い方法です。
男性の脳は、相手の行動が自分の行動とどんな関係があるのかを理解しようとするので、任せた作業の途中で「どう?」などと不用意に声をかけることで「信用されていない」と思われたり、プレッシャーに感じてしまうことがあります。
男性には、結果を出してから、その結果に対して声をかけましょう。出た結果を振り返りながら、途中の作業の間違いと結果との関係「原因と結果」を明らかにすると、相手は理解しやすいです。
女性はプロセスが大切。男性は結果が大切。
それぞれゴールへの道のりが違うということを理解しておきましょう。
さて、英子さんはというと。
「任せる」という言葉の通りに途中のプロセスを一人で歩み、最終的に修正されてしまったので、自分の企画に「関心をもたれていない」と感じたのでは。途中のプロセスで共感を得ておけば、最後にガクッとやる気を失うことはありません。
自分が「面白い」と思った作業を周囲に話すのも、プロセスを共有し、さらに質の良いものに発展できるポイントです。
いつかは自分の夢を。それを誰にも話さずにふつふつと考えていると、いざというときにガクッとやる気がなくなってしまうかも。最初から明確なゴールを目指さず、そのとき感じたことを周りの人と共有しながらぐるぐる進んでいくのが、自分の脳にとっては実は近道だということも知っておくと良いですね。
英子、29歳、会社員。肩書はあるセクションの長。
上司から任されているはずの企画に最終段階で修正が入る。「結局自分に任せてくれていないのか・・・」と苛立つ。上司からは「悪いね」と言いつつ「でもやってね」と。これでは何も言えなくなる。自分で企画をつくる面白さが分かって自信もついてきた。でも、任されていないと気づくと、ガクッとやる気がなくなってしまう。
自分は面白い企画をつくれると思う。今はそれに対して具体的なアクションはしていないが、やってみたいことがある。誰にも話していないけど、その夢をいつか現実にする。
上司からの修正にガクッとやる気をなくしてしまった英子さん。
私たちは、仕事を一任されると責任感とともにやる気もわきます。上司の立場では、部下のやる気を引き出しつつ、作業の軌道修正をしたいもの。お互いにやる気をもって仕事をしたいと思っているのに、結果的に英子さんはやる気をそがれてしまいました。
実は、このコミュニケーションのすれ違いには、男女の脳の違いが関係しています。
男性の脳と女性の脳は、解剖学的に構造が違います。
例えば、女性は男性に比べて創造性をつかさどる前頭葉が大きい。一方男性は、敵を発見して体の準備をする扁桃体(へんとうたい)や視床下部(ししょうかぶ)が大きいことが知られています。
そのような男女の脳の違いがもっとも顕著にみられるのが、感覚性言語野(かんかくせいげんごや)。女性はこの部分が男性より平均12%も神経の密度が濃いのです。
感覚性言語野が担っている役割は、「共感」すること。話の内容や文章を理解する力が、女性の方が得意な傾向があります。女性には共感が大切。そういえば、人気店やベストセラーは、女性の口コミによって生まれますよね。女性は、相手が話した内容を、脳内で「あたかも自分が体験した」ように感じとることができるのです。
一方で、この「共感」が弱い男性は、ものごとを関連付けることで理解しようとします。つまり、男性には因果関係が大切なのです。
この脳の違いは、作業を進めるときの声をかけるタイミングによく現れます。
女性の脳は、相手の行動から意図を察することが得意です。任せた作業の途中で、「面白そうだね」と声をかけると、自分の作業に関心をもっていることが伝わり、やる気が出やすい傾向があります。
作業を修正させたいならば、「こうするともっと面白いかも」と、途中でアイデアを投げかけるのも良い方法です。
男性の脳は、相手の行動が自分の行動とどんな関係があるのかを理解しようとするので、任せた作業の途中で「どう?」などと不用意に声をかけることで「信用されていない」と思われたり、プレッシャーに感じてしまうことがあります。
男性には、結果を出してから、その結果に対して声をかけましょう。出た結果を振り返りながら、途中の作業の間違いと結果との関係「原因と結果」を明らかにすると、相手は理解しやすいです。
女性はプロセスが大切。男性は結果が大切。
それぞれゴールへの道のりが違うということを理解しておきましょう。
さて、英子さんはというと。
「任せる」という言葉の通りに途中のプロセスを一人で歩み、最終的に修正されてしまったので、自分の企画に「関心をもたれていない」と感じたのでは。途中のプロセスで共感を得ておけば、最後にガクッとやる気を失うことはありません。
自分が「面白い」と思った作業を周囲に話すのも、プロセスを共有し、さらに質の良いものに発展できるポイントです。
いつかは自分の夢を。それを誰にも話さずにふつふつと考えていると、いざというときにガクッとやる気がなくなってしまうかも。最初から明確なゴールを目指さず、そのとき感じたことを周りの人と共有しながらぐるぐる進んでいくのが、自分の脳にとっては実は近道だということも知っておくと良いですね。
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2013年11月21日
第6回 一雄の場合vol.2
一雄の場合・・・vol.1はこちら
一雄、40歳代、会社。営業職のサブリーダー。若い世代を教育して、育っていくのが楽しみ。
買い物が好きだが、流行のものや、奇抜なものを買いたいとは全く思わない。定番で良質ないいものを買って、長く使うのがいちばんコストパフォーマンスがいいと思っている。飽きたり、趣味に合わなくなったら、オークションで売る(そのことも考えて、価値の下がらないいいものを買う)。自分の持っているものや身の回りのものは、かっこよくていいものだなという自負がある。(自分がかっこいいかどうかは別)
帰宅してまずするのは、靴の手入れ。
革靴が非常に好きなので、いいものを買って長く大切に履くようにしている。玄関で脱いだ靴は玄関に置かず、自室に持ち込んでいる。ほこりをとったり、クリームを塗ったり、乾燥材を入れたり、形をキープするために木型を入れたりする時間が楽しい。何年もかけて革の色や質感が変わっていったり、靴にシワが入っていくのがたまらない。靴が好きすぎることに始めは妻も驚いたり呆れたりしていたが、今は街で男性の足もとばかり見てしまい「きちんとした靴を履いていない人をみると、もっとちゃんと手入れをしたらいいのに」と思ってしまうと言っていた。
前回の記事【一雄の場合vol.2】でご紹介したように、朝の行動をルーチン化して脳に無駄な情報を入れない一雄さん。普段の生活でも、脳内の情報量が増えないように調整をしています。
流行りの物や新しい物を手に入れると脳は、興奮します。
この興奮をつくっているのが、「ドーパミン」という物質です。
ドーパミンは、脳幹(のうかん)の腹側被蓋野(ふくそくひがいや)から前頭葉に広く分泌される神経伝達物質です。ドーパミンの役割は、期待感をつくること。流行りの物や新しい物を見ると、脳内にドーパミンがぶわっと増えて、強い期待感を抱きます。
このドーパミンには、ちょっと厄介な性質があります。それは、「増える前の行動を繰り返させる」というもの。例えば、バーゲンセールで買い物をしているとします。最初は欲しい物を選んでいますが、1つ買うと、期待感をつくるドーパミンが脳内に増えます。すると、ドーパミンの作用によって、この「買う」という行動が繰り返させられるので、2つ、3つと買いたくなります。買う行為がエスカレートしていくと、洋服などの必要な物をそろえるというより、「買う」ということ自体が楽しくなってきます。買うことで気分が盛り上がり、気づいたら必要ない物まで買っていた・・・というご経験は、ありませんか?
ドーパミンのこのような作用は、ドーパミンアディクション(中毒)と呼ばれ、パチンコや買い物、アルコールやタバコなど、ある行為がやめられなくなってしまう原因になっています。ドーパミンは、期待感をつくる役割なのですが、満足感をつくることはできない物質なので、注意が必要なのです。
このドーパミンと相反する物質が、「セロトニン」です。セロトニンは、うつ病の治療薬でも使われていて、脳を緩やかに覚醒させて、突然の出来事にびっくりしないように、落ち着かせる物質です。
このセロトニンが増えているときは、ドーパミンがそれほど増えることはありません。セロトニンは、満足感をつくります。このセロトニンを増やすには、2つの方法があります。
(1) リズミカルな運動
(2) グルーミング
(1)1秒間に2~3回のテンポでリズムを刻むと、脳内にはセロトニンが増えます。私たちが日常生活でこのテンポを刻むのは、噛むことと歩くこと。
①1秒間に2~3回のテンポでリズムを刻むと、脳内にはセロトニンが増えます。私たちが日常生活でこのテンポを刻むのは、噛むことと歩くこと。
食事を良く噛んで食べたり、少し速いテンポで歩くことは、脳内にセロトニンを増やして、気分を落ち着かせ、満足感をつくることにつながります。
(2)グルーミングとは、毛づくろい行動のこと。動物が毛づくろいをするのは、脳内にセロトニンを増やし、ストレスに対処する行動なのです。私たち人間の場合は、質感の良い物に触れること、スキンシップ、談笑、同じ空間を共有することなどが該当します。
さて、良い品物を買って長く使い、革靴をこよなく愛する一雄さん。流行りの物に振り回されないようにされているのは、「ドーパミンアディクション」への対策と言えます。期待感に振り回されることを避け、気分が不要に乱されないようにされています。
そして、革靴の手入れ。この行為がグルーミングに当たります。肌触りの良い物に触れ、それを磨いたり、保湿する行為が、脳内にセロトニンを増やし、気分を安定させているのです。
一雄さんの奥さまが街の人を見て、「きちんとした靴を履いていない人をみると、もっとちゃんと手入れをしたらいいのに」と思うのは、このような人は、セロトニンが増えて満たされるような時間を持てていないように見えるからだと考えられます。ドーパミンに振り回されている人は、落着きなくどこかせかせかした印象を与えます。脳内の神経伝達物質によって、私たちの立居振舞や相手に与える印象が決まるのです。
ここでは、「ドーパミン」を悪者のようにご紹介しましたが、このドーパミンは恋愛をするためには、とても大切な役割をする物質です。「恋は盲目」と言われますが、期待感にあおられて相手にのめり込むような恋愛をするためにも、普段の生活でドーパミンを無駄遣いするのを避けてみましょう。
期待感に興奮したり、満足感を得る脳のクセを、うまく使いこなしていきましょう。
一雄、40歳代、会社。営業職のサブリーダー。若い世代を教育して、育っていくのが楽しみ。
買い物が好きだが、流行のものや、奇抜なものを買いたいとは全く思わない。定番で良質ないいものを買って、長く使うのがいちばんコストパフォーマンスがいいと思っている。飽きたり、趣味に合わなくなったら、オークションで売る(そのことも考えて、価値の下がらないいいものを買う)。自分の持っているものや身の回りのものは、かっこよくていいものだなという自負がある。(自分がかっこいいかどうかは別)
帰宅してまずするのは、靴の手入れ。
革靴が非常に好きなので、いいものを買って長く大切に履くようにしている。玄関で脱いだ靴は玄関に置かず、自室に持ち込んでいる。ほこりをとったり、クリームを塗ったり、乾燥材を入れたり、形をキープするために木型を入れたりする時間が楽しい。何年もかけて革の色や質感が変わっていったり、靴にシワが入っていくのがたまらない。靴が好きすぎることに始めは妻も驚いたり呆れたりしていたが、今は街で男性の足もとばかり見てしまい「きちんとした靴を履いていない人をみると、もっとちゃんと手入れをしたらいいのに」と思ってしまうと言っていた。
前回の記事【一雄の場合vol.2】でご紹介したように、朝の行動をルーチン化して脳に無駄な情報を入れない一雄さん。普段の生活でも、脳内の情報量が増えないように調整をしています。
流行りの物や新しい物を手に入れると脳は、興奮します。
この興奮をつくっているのが、「ドーパミン」という物質です。
ドーパミンは、脳幹(のうかん)の腹側被蓋野(ふくそくひがいや)から前頭葉に広く分泌される神経伝達物質です。ドーパミンの役割は、期待感をつくること。流行りの物や新しい物を見ると、脳内にドーパミンがぶわっと増えて、強い期待感を抱きます。
このドーパミンには、ちょっと厄介な性質があります。それは、「増える前の行動を繰り返させる」というもの。例えば、バーゲンセールで買い物をしているとします。最初は欲しい物を選んでいますが、1つ買うと、期待感をつくるドーパミンが脳内に増えます。すると、ドーパミンの作用によって、この「買う」という行動が繰り返させられるので、2つ、3つと買いたくなります。買う行為がエスカレートしていくと、洋服などの必要な物をそろえるというより、「買う」ということ自体が楽しくなってきます。買うことで気分が盛り上がり、気づいたら必要ない物まで買っていた・・・というご経験は、ありませんか?
ドーパミンのこのような作用は、ドーパミンアディクション(中毒)と呼ばれ、パチンコや買い物、アルコールやタバコなど、ある行為がやめられなくなってしまう原因になっています。ドーパミンは、期待感をつくる役割なのですが、満足感をつくることはできない物質なので、注意が必要なのです。
このドーパミンと相反する物質が、「セロトニン」です。セロトニンは、うつ病の治療薬でも使われていて、脳を緩やかに覚醒させて、突然の出来事にびっくりしないように、落ち着かせる物質です。
このセロトニンが増えているときは、ドーパミンがそれほど増えることはありません。セロトニンは、満足感をつくります。このセロトニンを増やすには、2つの方法があります。
(1) リズミカルな運動
(2) グルーミング
(1)1秒間に2~3回のテンポでリズムを刻むと、脳内にはセロトニンが増えます。私たちが日常生活でこのテンポを刻むのは、噛むことと歩くこと。
①1秒間に2~3回のテンポでリズムを刻むと、脳内にはセロトニンが増えます。私たちが日常生活でこのテンポを刻むのは、噛むことと歩くこと。
食事を良く噛んで食べたり、少し速いテンポで歩くことは、脳内にセロトニンを増やして、気分を落ち着かせ、満足感をつくることにつながります。
(2)グルーミングとは、毛づくろい行動のこと。動物が毛づくろいをするのは、脳内にセロトニンを増やし、ストレスに対処する行動なのです。私たち人間の場合は、質感の良い物に触れること、スキンシップ、談笑、同じ空間を共有することなどが該当します。
さて、良い品物を買って長く使い、革靴をこよなく愛する一雄さん。流行りの物に振り回されないようにされているのは、「ドーパミンアディクション」への対策と言えます。期待感に振り回されることを避け、気分が不要に乱されないようにされています。
そして、革靴の手入れ。この行為がグルーミングに当たります。肌触りの良い物に触れ、それを磨いたり、保湿する行為が、脳内にセロトニンを増やし、気分を安定させているのです。
一雄さんの奥さまが街の人を見て、「きちんとした靴を履いていない人をみると、もっとちゃんと手入れをしたらいいのに」と思うのは、このような人は、セロトニンが増えて満たされるような時間を持てていないように見えるからだと考えられます。ドーパミンに振り回されている人は、落着きなくどこかせかせかした印象を与えます。脳内の神経伝達物質によって、私たちの立居振舞や相手に与える印象が決まるのです。
ここでは、「ドーパミン」を悪者のようにご紹介しましたが、このドーパミンは恋愛をするためには、とても大切な役割をする物質です。「恋は盲目」と言われますが、期待感にあおられて相手にのめり込むような恋愛をするためにも、普段の生活でドーパミンを無駄遣いするのを避けてみましょう。
期待感に興奮したり、満足感を得る脳のクセを、うまく使いこなしていきましょう。
NEWS ◇著者新刊のお知らせ◇
コラム「クセ活用術」の著者・菅原洋平さんの新著が、2013年11月2日に発行されました。
『仕事力が上がる 睡眠の超技法』
(祥伝社/1365円)
眠りの習慣をほんの少し変えるだけで仕事力がアップ!?
企業や医療現場で実証済みの「スリープ・マネジメント」とは?
菅原さんによる、【起きている間の能力を活かすための睡眠】は必読です!
詳しくはこちら(Amazonの紹介ページ)
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Posted by 日刊いーしず at 12:00
2013年11月07日
第5回 里美の場合vol.2
里美の場合・・・vol.1はこちら
里美、34歳、会社員。内勤の事務職で、広告営業マンのサポートを行っている。営業マンからもサポートスタッフからも頼られる「姐さん」的なポジション。
◆ある退社後の夜/
仕事後、高校の同窓会会場の下見に行った。幹事なので。よく同窓会の幹事を頼まれる。周りから向いていると思われており、幹事をやれとよく言われる。めんどくさいと思うが、久々に会う人と一緒にやるのはなんだかんだで面白いのでやっている。
会場の下見の後、幹事仲間と飲みに行く。高校時代の昔話などをする。楽しい。2時間ほど飲む。
高校時代の同級生に会うと、時間が戻ったようで日常からはなれて楽しく話せる。話した後は気持ちがスッキリする。
よく同窓会の幹事を引き受ける里美さん。自分でも面白いと感じていますが、脳にとっては面白い以上に価値のある時間です。
私たちの脳は、過去を思い出しているときに、同時に未来を想像しています。逆に、未来を想像するときは、過去を思い出しています。例えば、新年の抱負を言うときには「(昨年は○○ができなかったから)今年は○○を達成する!」というように、( )内の部分を思い出してから、それにしたがって未来の行動を計画するという仕組みなのです。
脳の中では、過去を思い出しているときも、未来を想像しているときも、内側前頭葉、内側側頭葉、内側頭頂葉によってつくられる、「内側ネットワーク」が活発になります。
内側側頭葉は、過去の記憶を貯蔵している部位です。内側頭頂葉は、見たり聞いたり触ったりした感覚を司っています。そして、内側前頭葉は、未来の行動を計画しています。過去の記憶と、そのときどんな感じだったかという感覚を照合し、それにしたがって未来の行動計画を立てるというように、脳の中で連携をしているのです。
さて、里美さん。面白いから引き受けている同窓会の幹事は、脳にとっては、これからどんな生活をしていこうかと考えるという作用があります。自分のやりたいことや、今やるべきこと、自分しかできないことを模索しながら、これからの自分を考えようとすると、「一体自分は何がしたいんだろう・・・」と分からなくなってしまうことがあります。またそんなときは、頑張ろうと思うほど空回りしてしまって、何をやってもうまくいかないと思ってしまいがちです。
「未来が見えないな・・・」と思ったら、そのときは、脳の中の過去がうまく整理されていません。過去の記憶は非常にあいまいで、気分によって美しい記憶に飾り付けされたり、思い出したくない記憶に加工されたりします。あいまいな記憶のままでは、あいまいな未来しか想像できません。
そんなとき、自分のことを客観的に見てきた友人たちの話から、記憶が整理されると、これから先のことが見えてきて、気持ちがスッキリすることがあります。脳にとって、懐かしい友人たちとの会話は、自分らしく生きるための活動でもあるのです。
NEWS ◇著者新刊のお知らせ◇
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里美、34歳、会社員。内勤の事務職で、広告営業マンのサポートを行っている。営業マンからもサポートスタッフからも頼られる「姐さん」的なポジション。
◆ある退社後の夜/
仕事後、高校の同窓会会場の下見に行った。幹事なので。よく同窓会の幹事を頼まれる。周りから向いていると思われており、幹事をやれとよく言われる。めんどくさいと思うが、久々に会う人と一緒にやるのはなんだかんだで面白いのでやっている。
会場の下見の後、幹事仲間と飲みに行く。高校時代の昔話などをする。楽しい。2時間ほど飲む。
高校時代の同級生に会うと、時間が戻ったようで日常からはなれて楽しく話せる。話した後は気持ちがスッキリする。
よく同窓会の幹事を引き受ける里美さん。自分でも面白いと感じていますが、脳にとっては面白い以上に価値のある時間です。
私たちの脳は、過去を思い出しているときに、同時に未来を想像しています。逆に、未来を想像するときは、過去を思い出しています。例えば、新年の抱負を言うときには「(昨年は○○ができなかったから)今年は○○を達成する!」というように、( )内の部分を思い出してから、それにしたがって未来の行動を計画するという仕組みなのです。
脳の中では、過去を思い出しているときも、未来を想像しているときも、内側前頭葉、内側側頭葉、内側頭頂葉によってつくられる、「内側ネットワーク」が活発になります。
内側側頭葉は、過去の記憶を貯蔵している部位です。内側頭頂葉は、見たり聞いたり触ったりした感覚を司っています。そして、内側前頭葉は、未来の行動を計画しています。過去の記憶と、そのときどんな感じだったかという感覚を照合し、それにしたがって未来の行動計画を立てるというように、脳の中で連携をしているのです。
さて、里美さん。面白いから引き受けている同窓会の幹事は、脳にとっては、これからどんな生活をしていこうかと考えるという作用があります。自分のやりたいことや、今やるべきこと、自分しかできないことを模索しながら、これからの自分を考えようとすると、「一体自分は何がしたいんだろう・・・」と分からなくなってしまうことがあります。またそんなときは、頑張ろうと思うほど空回りしてしまって、何をやってもうまくいかないと思ってしまいがちです。
「未来が見えないな・・・」と思ったら、そのときは、脳の中の過去がうまく整理されていません。過去の記憶は非常にあいまいで、気分によって美しい記憶に飾り付けされたり、思い出したくない記憶に加工されたりします。あいまいな記憶のままでは、あいまいな未来しか想像できません。
そんなとき、自分のことを客観的に見てきた友人たちの話から、記憶が整理されると、これから先のことが見えてきて、気持ちがスッキリすることがあります。脳にとって、懐かしい友人たちとの会話は、自分らしく生きるための活動でもあるのです。
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Posted by 日刊いーしず at 12:00
2013年10月24日
第4回 英子の場合vol.2
英子の場合・・・vol.1はこちら
英子、29歳、会社員。
肩書はあるセクションの長。
仕事はデスクワーク中心で、1日中PCに向かい、文章を書いたり、記事のレイアウトをしている。文章を書いているときには、Enterキーを右手の薬指で勢いよく叩くクセがある。節目を刻む音がフロアに響くと「これでどうだ!」と戦闘態勢になり、頭が冴えわたってくる。
周りの人がうるさがっているのかどうかは知らないが。テンポよく仕事をするのって大事だと思う。
Enterキーを叩くことで英子さんが使っているのは、多重感覚入力(たじゅうかんかくにゅうりょく)という仕組みです。
私たちは、見たり(視覚)、聞いたり(聴覚)、触ったり(触覚)することで、今、自分が何をしているのか、それがうまく出来ているのか、ということを判断します。この見たり、聞いたり、触ったりして得た情報は、脳の後方連合野(こうほうれんごうや)という場所に集められます(図の赤丸)。
ここに集められる情報が多ければ多いほど、私たちは自分がどんな行動をしているのかが良くわかり、うまく調整できるので、仕事の効率が上がります。
見るだけより触ってみると、よりその形が正確に理解できたり、触ってみて固い物を叩いて「コンコン」という音がすると、その固さの程度がより分かるのは、脳の後方連合野で、複数の情報が合わさって、よりリアルになったからです。
さて、英子さんは、仕事がノッてくるようにEnterキーを勢いよく叩きます。このときに英子さんの脳では、パソコンで書いた文章の節が、キーボードを触るだけでなく、音を出したことでよりリアルになり、「節目がついたぞ!」と認識しやすくなっているのです。
このように脳の中に入る情報が多くなると、脳はそれだけ精度の高い動きを体に命令することができますし、体が命令通りに良く動けば、「(命令通り)成功した!」とやる気も出てきます。
何かを記憶するときに口に出して節目で手を叩いたり、固い鉛筆で「コツコツ」と机の音が聞こえるように書いているときはアイデアが浮かぶ、なんていうのも、同じことです。こんな癖がある方は、自分の能力を高めるために、うまく脳に入る情報を増やしているということです。
文字を書くときに筆圧が強くなり過ぎてしまう人は、固めのノートや鉛筆を使う。いつもメモが手帳の罫線からはみ出してしまう人は、大きめの手帳を使う。こんなふうに普段使う道具を、自分のクセを基準に選んでみると、仕事の効率もアップするはずです。
英子、29歳、会社員。
肩書はあるセクションの長。
仕事はデスクワーク中心で、1日中PCに向かい、文章を書いたり、記事のレイアウトをしている。文章を書いているときには、Enterキーを右手の薬指で勢いよく叩くクセがある。節目を刻む音がフロアに響くと「これでどうだ!」と戦闘態勢になり、頭が冴えわたってくる。
周りの人がうるさがっているのかどうかは知らないが。テンポよく仕事をするのって大事だと思う。
Enterキーを叩くことで英子さんが使っているのは、多重感覚入力(たじゅうかんかくにゅうりょく)という仕組みです。
私たちは、見たり(視覚)、聞いたり(聴覚)、触ったり(触覚)することで、今、自分が何をしているのか、それがうまく出来ているのか、ということを判断します。この見たり、聞いたり、触ったりして得た情報は、脳の後方連合野(こうほうれんごうや)という場所に集められます(図の赤丸)。
ここに集められる情報が多ければ多いほど、私たちは自分がどんな行動をしているのかが良くわかり、うまく調整できるので、仕事の効率が上がります。
見るだけより触ってみると、よりその形が正確に理解できたり、触ってみて固い物を叩いて「コンコン」という音がすると、その固さの程度がより分かるのは、脳の後方連合野で、複数の情報が合わさって、よりリアルになったからです。
さて、英子さんは、仕事がノッてくるようにEnterキーを勢いよく叩きます。このときに英子さんの脳では、パソコンで書いた文章の節が、キーボードを触るだけでなく、音を出したことでよりリアルになり、「節目がついたぞ!」と認識しやすくなっているのです。
このように脳の中に入る情報が多くなると、脳はそれだけ精度の高い動きを体に命令することができますし、体が命令通りに良く動けば、「(命令通り)成功した!」とやる気も出てきます。
何かを記憶するときに口に出して節目で手を叩いたり、固い鉛筆で「コツコツ」と机の音が聞こえるように書いているときはアイデアが浮かぶ、なんていうのも、同じことです。こんな癖がある方は、自分の能力を高めるために、うまく脳に入る情報を増やしているということです。
文字を書くときに筆圧が強くなり過ぎてしまう人は、固めのノートや鉛筆を使う。いつもメモが手帳の罫線からはみ出してしまう人は、大きめの手帳を使う。こんなふうに普段使う道具を、自分のクセを基準に選んでみると、仕事の効率もアップするはずです。
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2013年10月10日
第3回 一雄の場合vol.1
一雄、40歳 会社員で営業職。
既婚。同い年の妻がいて、妻も勤めに出ている。
小学校入学前の子どもが二人いる。日中は子供を保育園に預けており、妻が送り迎えをしている。
仕事では、営業部のサブリーダー。人に何かを教えたり、若い世代がそれによって成長していくのを見るのが好き。現在の仕事の上でも、教育や指導をしたり、講師としてセミナーで話をしたりといった場面はあるが、もっと直接的に「教える」ということを自分の仕事にできないかと考えている。今すぐではなくても、たとえば定年後にでも。大学で教員免許を取得しており、これまでに教職に就いたことはないが、そういったことに年々興味が増してきている。
【一雄のとある朝の様子】
先週は出張続きで会社にあまりいなかったため、たまった事務処理を片付けるためにいつもより早く起きて早く起床した。会社に着いてからの仕事の流れを頭の中で組み立てながら朝食を食べる。歯を磨き、顔を洗い、着替えて家を出る。
その間も、出社してからの予定や流れを考えている。
会社近くのコンビニでアイスコーヒーを買ってから出社。いつもの行動。お酒もタバコもやらないが、コーヒーは1日に5~6杯飲むカフェイン中毒。
皆さんは、何かの課題に集中しているときに脳を使っていて、ボーっとしているときは、脳はからっぽだと思っていませんか?実は、ボーっとしているときには、ボーっとするための脳が活発に活動しているのです。
課題に集中しているときの脳は、実行系ネットワークと呼ばれます。それに対して、ボーっとしているときの脳は、デフォルト系ネットワーク。デフォルトとは、初期設定という意味ですが、脳科学では、準備状態という意味で使われます。
下の図のように、私たちの脳は、何もしていないときはデフォルト系ネットワークが活発になり、内側前頭前野(ないそくぜんとうぜんや)、眼窩回(がんかかい)などが働いています。そこで、課題に取り組んでみますと、実行系ネットワークが活発になり、背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)、頭頂間溝(とうちょうかんこう)などが働きます。
デフォルト系ネットワークは、主に考えをまとめる役割をしています。私たちがボーっとしているときは、脳内では、それまでに詰め込まれた情報の整理が行われているのです。このデフォルト系ネットワークが働くときに、「ひらめき」が起こることが知られています。
デフォルト系ネットワークは、ただ単にボーっとするよりも、自動化されたことをしているときの方がより働くことが知られています。それは、食べることと歩くこと。みなさんも、食事中に「あっ今日あれやるの忘れた!」とか歩いているときに「そうか!あれ調べれば分かるかも」とひらめいた経験があるのではないでしょうか。これが、デフォルト系ネットワークの働きなのです。
ひらめきが起こるなら、このデフォルト系ネットワークを有効活用したいですよね。実は、実行系ネットワークとデフォルト系ネットワークは相反する働きをもっています。一方に脳内のエネルギーを奪われると、一方が働かなくなる。例えば、作業に集中しているときは考え事ができなくなりますし、考え事が頭から離れないときは、作業をしていても何も手につかなくなってしまいます。私たちが仕事やプライベートで能力を発揮するためには、この2つの系統をタイミングよく使い分けることが重要なのです。
さて、一雄さんの脳を見てみましょう。会社に着いてからの仕事の流れを頭の中で組み立てながら朝食を食べる。ここで食事という自動化された作業中にデフォルト系ネットワークを使っていますね。このような使い方は、デフォルト系ネットワークがより活性化しますので、会社のデスクの風景や、昨日までに伝達されていた事項など、様々な記憶が効率よく検索されて、その日の段取りが立てやすくなります。
男性は食事中にデフォルト系ネットワークを使う傾向が強いようです。男性にとって食事は自動化された運動かもしれませんが、注意したいのが奥さまとの食事。女性にとって食事は、食べ物を食べるというより、コミュニケーションの要素が強いです。朝食のときぐらいしか話をする時間がない中で、その時間を考え事に使われてしまうと、奥さまとしてはイライラのもとにも。デフォルト系ネットワークが使われているときは、他人から見ると「心ここに在らず」という様子です。「ちゃんと私の話を聞いてるの?」と言われてしまわないように、場面によって脳の活動を切り替えたいですね。
そして、会社近くのコンビニでアイスコーヒーを買ってから出社といういつも通りの行動。これもデフォルト系ネットワークを活用する良い方法です。朝の行動をいつも同じにして自動化することで、実行系ネットワークにエネルギーをもっていかれないようにセーブしています。
一雄さんにとって朝の時間とは、考えをまとめる重要な時間なようですね。この時間にデフォルト系ネットワークが上手に使えるようにうまく行動が配置されていました。
ん?なんか変ですね。コーヒーは1日に5~6杯飲むカフェイン中毒。実は、一雄さん、朝に考え事をするのはあまり良くないサインかもしれません。
一雄さんがコーヒーを多飲するのは、脳がしっかり目覚めていないから。下図のように、カフェインには、脳に眠くなる物質(プロスタグランディンD2)が溜まったままで、脳を眠らせるGABAをブロックする作用があります。
つまり、脳の働きは低下したまま、眠れないという状態。カフェインには目を覚めさせる働きはないのです。
一雄さんが、朝に考え事をするのは、実は、脳をしっかり目覚めさせて作業に集中する実行系ネットワークが使えなくなっているからです。しっかり目覚めていないから考え事をしてしまっている。それを自分では、朝は考え事をする時間だと思い込んでしまっています。
そこで、一雄さんが、朝の時間をもっと有効活用できるための方法はこちら。
「目覚めたら窓から1m以内のところに入る」
脳に溜まった睡眠物質は、光を見ると減って、脳がしっかり目覚めます。光を見るのは、目覚めてすぐのタイミングが最も有効。そして、部屋の照明では暗いので、窓から1m以内に入る。直射日光でなくても、外の光が脳に届いて、スッキリ目覚めます。2週間継続すれば、コーヒーの量、減ってきますよ!
クセには、自分を活かすものもありますが、うまくいっていないことをカバーするために脳が命令しているものもあります。クセを見抜いて、もっと自分を活かす習慣を見つけていきましょう!
既婚。同い年の妻がいて、妻も勤めに出ている。
小学校入学前の子どもが二人いる。日中は子供を保育園に預けており、妻が送り迎えをしている。
仕事では、営業部のサブリーダー。人に何かを教えたり、若い世代がそれによって成長していくのを見るのが好き。現在の仕事の上でも、教育や指導をしたり、講師としてセミナーで話をしたりといった場面はあるが、もっと直接的に「教える」ということを自分の仕事にできないかと考えている。今すぐではなくても、たとえば定年後にでも。大学で教員免許を取得しており、これまでに教職に就いたことはないが、そういったことに年々興味が増してきている。
【一雄のとある朝の様子】
先週は出張続きで会社にあまりいなかったため、たまった事務処理を片付けるためにいつもより早く起きて早く起床した。会社に着いてからの仕事の流れを頭の中で組み立てながら朝食を食べる。歯を磨き、顔を洗い、着替えて家を出る。
その間も、出社してからの予定や流れを考えている。
会社近くのコンビニでアイスコーヒーを買ってから出社。いつもの行動。お酒もタバコもやらないが、コーヒーは1日に5~6杯飲むカフェイン中毒。
皆さんは、何かの課題に集中しているときに脳を使っていて、ボーっとしているときは、脳はからっぽだと思っていませんか?実は、ボーっとしているときには、ボーっとするための脳が活発に活動しているのです。
課題に集中しているときの脳は、実行系ネットワークと呼ばれます。それに対して、ボーっとしているときの脳は、デフォルト系ネットワーク。デフォルトとは、初期設定という意味ですが、脳科学では、準備状態という意味で使われます。
下の図のように、私たちの脳は、何もしていないときはデフォルト系ネットワークが活発になり、内側前頭前野(ないそくぜんとうぜんや)、眼窩回(がんかかい)などが働いています。そこで、課題に取り組んでみますと、実行系ネットワークが活発になり、背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)、頭頂間溝(とうちょうかんこう)などが働きます。
デフォルト系ネットワークは、主に考えをまとめる役割をしています。私たちがボーっとしているときは、脳内では、それまでに詰め込まれた情報の整理が行われているのです。このデフォルト系ネットワークが働くときに、「ひらめき」が起こることが知られています。
デフォルト系ネットワークは、ただ単にボーっとするよりも、自動化されたことをしているときの方がより働くことが知られています。それは、食べることと歩くこと。みなさんも、食事中に「あっ今日あれやるの忘れた!」とか歩いているときに「そうか!あれ調べれば分かるかも」とひらめいた経験があるのではないでしょうか。これが、デフォルト系ネットワークの働きなのです。
ひらめきが起こるなら、このデフォルト系ネットワークを有効活用したいですよね。実は、実行系ネットワークとデフォルト系ネットワークは相反する働きをもっています。一方に脳内のエネルギーを奪われると、一方が働かなくなる。例えば、作業に集中しているときは考え事ができなくなりますし、考え事が頭から離れないときは、作業をしていても何も手につかなくなってしまいます。私たちが仕事やプライベートで能力を発揮するためには、この2つの系統をタイミングよく使い分けることが重要なのです。
さて、一雄さんの脳を見てみましょう。会社に着いてからの仕事の流れを頭の中で組み立てながら朝食を食べる。ここで食事という自動化された作業中にデフォルト系ネットワークを使っていますね。このような使い方は、デフォルト系ネットワークがより活性化しますので、会社のデスクの風景や、昨日までに伝達されていた事項など、様々な記憶が効率よく検索されて、その日の段取りが立てやすくなります。
男性は食事中にデフォルト系ネットワークを使う傾向が強いようです。男性にとって食事は自動化された運動かもしれませんが、注意したいのが奥さまとの食事。女性にとって食事は、食べ物を食べるというより、コミュニケーションの要素が強いです。朝食のときぐらいしか話をする時間がない中で、その時間を考え事に使われてしまうと、奥さまとしてはイライラのもとにも。デフォルト系ネットワークが使われているときは、他人から見ると「心ここに在らず」という様子です。「ちゃんと私の話を聞いてるの?」と言われてしまわないように、場面によって脳の活動を切り替えたいですね。
そして、会社近くのコンビニでアイスコーヒーを買ってから出社といういつも通りの行動。これもデフォルト系ネットワークを活用する良い方法です。朝の行動をいつも同じにして自動化することで、実行系ネットワークにエネルギーをもっていかれないようにセーブしています。
一雄さんにとって朝の時間とは、考えをまとめる重要な時間なようですね。この時間にデフォルト系ネットワークが上手に使えるようにうまく行動が配置されていました。
ん?なんか変ですね。コーヒーは1日に5~6杯飲むカフェイン中毒。実は、一雄さん、朝に考え事をするのはあまり良くないサインかもしれません。
一雄さんがコーヒーを多飲するのは、脳がしっかり目覚めていないから。下図のように、カフェインには、脳に眠くなる物質(プロスタグランディンD2)が溜まったままで、脳を眠らせるGABAをブロックする作用があります。
つまり、脳の働きは低下したまま、眠れないという状態。カフェインには目を覚めさせる働きはないのです。
一雄さんが、朝に考え事をするのは、実は、脳をしっかり目覚めさせて作業に集中する実行系ネットワークが使えなくなっているからです。しっかり目覚めていないから考え事をしてしまっている。それを自分では、朝は考え事をする時間だと思い込んでしまっています。
そこで、一雄さんが、朝の時間をもっと有効活用できるための方法はこちら。
「目覚めたら窓から1m以内のところに入る」
脳に溜まった睡眠物質は、光を見ると減って、脳がしっかり目覚めます。光を見るのは、目覚めてすぐのタイミングが最も有効。そして、部屋の照明では暗いので、窓から1m以内に入る。直射日光でなくても、外の光が脳に届いて、スッキリ目覚めます。2週間継続すれば、コーヒーの量、減ってきますよ!
クセには、自分を活かすものもありますが、うまくいっていないことをカバーするために脳が命令しているものもあります。クセを見抜いて、もっと自分を活かす習慣を見つけていきましょう!
Posted by 日刊いーしず at 12:00